30代世代に産業音楽という言葉はタブー

30代世代に馴染みの深い音楽は80年中盤~90年代音楽になります。70年代音楽は、40代や50代の方が馴染みが深いでしょう。実は、この80年代音楽というのは、意外に評価が低いのが現状です。逆に、「70年代音楽」というのは、邦楽も洋楽も評価は高かったります。

洋楽でいうと、一世を風靡した“イーグルス”などのウエストコーストサウンドは70年代!ロック界を代表するエアロ・スミスやヴァンヘイレン、という全世界から高い評価を受けているバンドも70年代。マイケルジャクソンもソロで人気が出てきたのは、70年代後半から80年代にかけてです。歴史の長いクラプトンも70年代には、名曲を何曲も残しています。

一方、80年代中盤から90年代にかけてというと。デビューバンドこそ多かったものの、未だに語り継がれるような大型バンドとは無縁の時代だったように感じます。強いて言えば、ガンズ・アンド・ローゼズ、ボンジョビ、あたりは成功を収めたバンドといえますが、他のバンドに関しては“いっときのブーム”でしかありませんでした。

2000年を超えた時期に、世界で活躍をする大物アーティストは70年代に誕生した人達ばかり、80年代~90年代にかけて成功を収めたアーティストはどこにいってしまったのでしょうか。

80年代後半~90年代にかけては、ユーロビートが流行った時代ですが、シンセサイザーを使った打ち込み音楽ですので、正直、味も深みもありません。「あ~流行ったね」くらいで話題は終わってしまいます。音楽好きにとっては、物足りない時代だったのかもしれません。

80年代音楽の評価が低いのは、このような理由があるからのようです。ロック史でいえば、“産業ロック”なんて言われた時代です。正直、ヒットしか意識していないアーティストも多かったので、ロック界だけでなく、音楽界全体に“産業色”の強い時代だったのかもしれません。“産業音楽”と言ってる人もいました。

産業ロック・産業音楽という言葉は、70年代音楽を知っている人が後輩世代に対して、小馬鹿にした言い方です。映画のサントラがヒットチャートを騒がせる時代は80年代からです。産業ロックの代名詞的存在の“ジャーニー”は300万枚ものセールスを記録しました。

しかし、この不景気続きの音楽業界を救った“ジャーニー”は、個性や主張がないという理由で、一部の音楽評論家から批判を受けることになります。映画のワンシーンを意識して作られる音楽を厳しく批判されることもよくありました。

プロである以上、セールスを意識して作品を作り上げることは大事なことです。しかしながら、やり過ぎた音楽が目立ち過ぎたが80年代~90年代の音楽です。これが70年代音楽との決定的な違いでしょう。

30代世代の音楽好きの人は、この違いに触れられることを嫌う人がたくさんいます。安易に“産業ロック”“産業音楽”というフレーズを口にしないようにしましょう。思わぬトラブルに発展するかもしれません。

もちろん、自分(30代)もあまり触れられたくない部分です。自分が、青春時代に聴いてきた音楽や好きだったミュージシャンを全否定されているように感じてしまうからです。

個人的な意見で言わせてもらえば、80年代音楽も70年代に負けないくらい素晴らしいものだったと思います。最近の音楽シーンと比べれば、まだ個性を感じる音楽がたくさんあった時代だと自負しています。本当に、産業音楽という言葉を使うのであれば、今の音楽シーンにこそ相応しい称号なのではないでしょうか。